※2024/04/06 Update※
FIREを目指している方は、トリニティスタディの4%ルールで資産引き出しを考えている方が多いと思います。
早期退職のためにいくら必要か?という目標資産を、年間支出の25倍に設定してがんばっていると、こんなことが気にならないでしょうか?
気になるポイント
- ドルではなく円でも、4%ルールは通用するのか?
- 日本のインフレ率でも、30年間資産は持つのか?
- 4%ルールで取り崩していくと、10年後、20年後、30年後の資産はどれぐらい残っているのか?
今回の記事では、過去約50年分のS&P500と日本のインフレ率データから、トリニティスタディの4%ルールで取り崩したシミュレーションし、日本でも4%ルールでFIREしても大丈夫なのか?を解説します。
FIREから5年後、10年後、15年後、20年後、25年後、30年後と6パターンのシミュレーションしていますので、年金受給時にどの程度資産が残りそうか?もわかりますので、FIREを目指す方は必見の内容となります。
1.トリニティスタディの4%ルール
トリニティスタディとは、1998年にトリニティ大学の教授たちによって発表された、退職後の資産運用における持続可能な引き出し率についての研究結果です。
トリニティスタディの研究では、1926年から1995年までの株式(S&P500)と債券のデータを用いて、さまざまな引き出し率とポートフォリオの組み合わせでシミュレーションが行われました。
ココがポイント
その結果、株式75%、債券25%のポートフォリオで、4%の引き出し率を適用した場合、30年後に資産が残る確率は98%と非常に高いことが示されました。
この研究結果が、FIRE(Financial Independence, Retire Early)において重要な指標とされています。そのため、早期退職にいくら必要か?の目安として4%ルールが指標となり、年間支出の25倍(4%引き出し)の資産が目標となっています。
ただし、実際の運用では、税金や取引コスト、為替の影響や個人のライフスタイル、市場の変動など、考慮すべき要素が多く存在します。また、過去データからの研究であり未来はわかりませんので、4%ルールはあくまで参考として捉えるべきでしょう。
2.FIREのシミュレーション条件
シミュレーション期間は、1ドル360円の為替が崩れた1971年から(その後変動為替相場へ移行)2023年末まででシミュレーションをしています。
なお、独身の一人暮らしで最低限と必要と思われる、月20万円で生活することを想定したシミュレーションのため、条件は以下の通りです。
FIREシミュレーション条件
- スタートの資産は6,000万円
- トリニティスタディの4%ルール:月20万円(年間240万円)で取り崩し開始
- 2年目以降は日本のインフレ率を考慮した取り崩し額へ変更
- シミュレーションは5年、10年、15年、20年、25年、30年の6パターン
- 運用はS&P500連動の投資信託へ100%
- 投資信託の経費率は0.1%で計算(eMAXIS Slimシリーズ想定)
- 配当はすべて再投資とし、直近の配当率1.10%で一律計算
- ドルベースではなく、円ベースでの算出
- 結果は12月末の資産評価額(端数は万単位で切り上げ)
3.FIREの取り崩しシミュレーション結果
それでは、1971年~2023年の期間でFIREした場合、それぞれの年で資産がどの程度残ったのか?をシミュレーション結果から見てみましょう。
なお、オレンジ~赤の部分は元の資産であるの6,000万円を下回ったパターンであり、緑色になるほど資産額が大きくなっていきます。
※平均を算出するため、資産がマイナスになっても取り崩しを実行したこととして計算しています※
FIRE 5年後の資産シミュレーション
FIREして5年しか経っていないのに、資産が30%以上減ってしまうパターンが49回中12回(約24%)もあります!50%以上資産が減ることもあり、資産が本当に30年も持つのか?非常に不安になりそうです。。。
FIRE 10年後の資産シミュレーション
FIREして10年後の資産状況は2極化している印象です。資産が約50%以上減ってしまう非常に厳しいパターンが44回中7回(約16%)と結構な確率で起きており、90%近く資産が減るケースもあります。
FIRE 15年後の資産シミュレーション
FIREの目安である30年資産が持てばOKと考えた場合、15年後に50%以上減ってしまうパターンは39回中6回(約15%)となり、そのうち2回は約50%マイナスであるため、失敗しそうなのは39回中4回(約10%)となります。ただし、1971、1972、1973年にFIREした場合、既に資産が枯渇(約11~12年しか資産が持たなかった)しているため失敗確定です。
FIRE 20年後の資産シミュレーション
FIREして20年後のシミュレーションで資産増減がマイナスになっているのは、第一次オイルショック、ドットコムバブル崩壊など、大きな暴落が起きる手前でFIREした時になります。他の年にFIREした場合、資産が減るどころか大きく増えていることのほうが多いぐらいです。
FIRE 25年後の資産シミュレーション
FIREして25年後のシミュレーション結果、1971~1974年の4年間は資産が枯渇してしまいます。ただし、それ以外はほとんどの年で4%ルールで取り崩しているのに資産が増えていくという結果になっています。しかも、平均で当初の資産から2倍に膨らんているという状態です。
FIRE 30年後の資産シミュレーション
1971年以降に日本でFIREし、4%ルールで取り崩した場合、30年後も資産が残っている確率は24回中19回(約79%)というシミュレーション結果になりました。ただし、直近約50年の結果であり、24回分しかデータがありません。これを多いと考えるか、少ないと考えるか。。。
4.ワーストケースのFIREシミュレーションについて
FIREを目指す方にとって、ベストケースよりもワーストケースを想定しておくことが重要です。
FIREシミュレーションで30年間資産がもたなかったパターンは5回となり、資産が枯渇してしまう期間は以下の通りです。
1971年にFIRE:136ヶ月(11年4ヶ月)で枯渇
1972年にFIRE:142ヶ月(11年10ヶ月)で枯渇
1973年にFIRE:129ヶ月(10年9ヶ月)で枯渇
1974年にFIRE:212ヶ月(17年8ヶ月)で枯渇
1976年にFIRE:328ヶ月(27年4ヶ月)で枯渇
約11年で資産が枯渇してしまうことがあるのは非常に不安です。やはり株はリスク資産であり、FIRE後に100%株で運用するのは、非常にリスクが高いです。
さて、FIREして資産を取り崩しても、あまり減らない、もしくは、増えていくような状態であれば、不安やストレスはほぼないと思われますが、大きく減ってしまった時に耐えられるのか?は非常に重要なポイントではないでしょうか。
稼ぐ手段が減ってから資産が尽きてしまうと、人生ハードモードになるのは容易に想像できますので。。。
そこで、残った資産額だけでなく、以下のような厳しかったパターンの資産推移を見ておきましょう。
参考
- ドットコムバブル崩壊前にFIREしたパターン・・・リーマンショックもうける
- 第一次オイルショック前にFIREしたパターン・・・ブラックマンデーもうけつつ、すごいインフレ(10%以上)に見舞われる
ドットコムバブル崩壊前にFIREしたシミュレーション
第一次オイルショック前にFIREしたシミュレーション
最も厳しいパターンのFIREシミュレーションとなりますので、少し極端な例ではあります。
ただ、過去にFIREしていたら、このような資産推移をたどることがあったわけで、今後も起こりえることは十分ありますし、さらに厳しい推移をたどる可能性もあります。
1973年にFIREすると、2年後に資産が半分になり、資産が11年も持たずに枯渇してしまいます、、、皆さんは耐えられそうでしょうか?
5.FIRE後の資産シミュレーションまとめ
FIREのシミュレーション結果、5年後~30年後の平均値は以下の通りです。
平均を見れば、トリニティスタディの4%ルールで取り崩した場合、資産は減るどころか増えていくことになります。また、30年間資産が持つか?についても、1971年以降24回中19回(約79%)のケースで30年間、資産が枯渇することがなかったという結果です。
なお、資産が枯渇した最速は1973年にFIREしたパターンで、約11年後に資産が枯渇するというシミュレーション結果となっています。
FIREシミュレーションまとめ
- 日本でもトリニティスタディの4%ルールは通用する
- FIREして3年以内に暴落(指数で40-50%下落するような)すると厳しい
- FIREして5年後に資産が40%以上減っていることが普通にある
- インフレ率が5%を超える状態が続くとかなり厳しい
直近約50年のシミュレーション結果であり、未来はわかりませんので、あくまで参考としてください。
新NISAを始めた方、5年後にどのぐらい増えるのか、気になりませんか?平均利回りからではなく、過去データからシミュレーションした結果を見てみませんか?
ブレ幅が大きくて、おそらく驚く方が多いのではないでしょうか・・・。