FIREに向けて

S&P500が暴落してもFIREを成功させる方法とは?シミュレーションで徹底検証!

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SP500が暴落してもFIREを成功させる方法

FIREを達成し、ようやく自由な生活!となっても、FIRE直後に株価が暴落したらどうなるでしょうか?

資産の取り崩しを前提とするFIRE生活において、「株価暴落のタイミング」は成功を大きく左右する重要な要素です。特に、FIRE直後に株価が暴落すると、資産の取り崩しによる影響が大きくなり、4%ルールで取り崩していると資産が枯渇してしまいます。

以前の記事「S&P500の大暴落前にFIREしたらどうなる?株価シミュレーションと暴落対策を解説!」では、S&P500が暴落する直前にFIREした場合の資産取り崩しシミュレーションを解説しました。

暴落対策として「取り崩し率を1.8%(約55年分の資産を準備する)まで下げると資産が枯渇することがなかった」

としましたが、それではいつまでもFIREできそうにありません。

そこで本記事では、過去の暴落時に暴落対策してFIREしていたらどうなっていたのか?をシミュレーションし、暴落を乗り越えるための対策を検証します。

ここが知りたい

    • オイルショックやITバブル崩壊のような暴落時にFIREしていたら?
    • 「リターンの順序リスク」とは何か? FIREにどのような影響を及ぼすのか?
    • 取り崩し率を下げる、現金クッションを持つといった対策はどの程度有効なのか?

実際のシミュレーション結果をもとに、FIRE後の暴落対策を考えていきましょう!

FIREを達成した後、株価が長期的に上昇していけば、資産は持続しやすくなります。しかし、FIRE直後に株価が暴落すると、その間の取り崩しによって資産が急激に減少し、その後の資産回復が難しくなるという問題があります。
このように、資産の増減の順番がFIREの成功を左右するリスクを「リターンの順序リスク(Sequence of Returns Risk)」と呼びます。

本章では、リターンの順序リスクの影響と対策について考えていきます。

1-1. 「リターンの順序リスク」が資産寿命に与える影響をシミュレーション

シミュレーションを通じて、リターンの順序リスクがどのように資産寿命を左右するのかを確認してみます。

株価シナリオは以下の3つで比較します。

シナリオ1:最初の4年間で株価が50%マイナスとなり、以降は年利9%で上昇
シナリオ2:最初の5年間は年利9%で上昇し、その後4年間で株価が50%マイナス、以降は年利9%で上昇
シナリオ3:年利5.29%で上昇し続ける

リターンの順序リスク_株価シナリオ

3つのシナリオの株価推移は上記の通りとなり、30年後の株価はすべてのシナリオで470となります。なお、シナリオ1と2は9年後から完全に重なっています。

この3つの株価シナリオにおける4%ルールで取り崩した場合、以下のような資産推移となります。

リターンの順序リスク_取り崩しシミュレーション

最終株価はすべて同じですが、最初の4年間で暴落したシナリオ1だけ23年後には資産が枯渇してしまいます。この結果からもわかるように、FIRE直後の暴落は資産寿命に大きな影響を与えることが確認できます。

1-2. なぜ暴落直後のFIREは危険なのか?過去の事例で解説!

リターンの順序リスクで示したような株価の動きは現実にはあり得ませんので、実際のS&P500の株価でどの程度違うのか?を過去事例で見てみましょう。

ITバブル崩壊の前後でFIREした場合、1999年7月が円建てS&P500が最高値となっていますので、その前後6ヶ月ずらしてFIREしたパターンで比較します。それぞれスタート資産は6000万円とし、4%ルールで年間240万円取り崩した場合、2025年2月末時点での資産は以下の通りです。

ココがポイント

  • 1999年1月にFIRE:約1億1,250万円
  • 1999年7月にFIRE:約4,050万円
  • 2000年1月にFIRE:約1億1,150万円

FIREするタイミングが半年ずれただけで、残資産が2.5倍以上の差になっています!!

1-3. FIRE成功のための「リターンの順序リスク」対策

FIRE直後の暴落は非常にリスクが高いため、FIRE成功のカギは「リターンの順序リスク」を軽減する」ことです。対策としては以下のようなものになります。


① 取り崩し率を柔軟に調整する

4%ルールにこだわらず、暴落時は取り崩し率を一時的に下げる ことで、資産の減少を抑えることができます。
例えば、暴落時には取り崩し率を3%に抑え、株価回復後に再調整する といった戦略が有効です。


② 現金クッション(キャッシュバッファ)を持つ

暴落時に資産を取り崩すと、株を安値で売ることになり資産寿命が短くなります。
これを防ぐために、生活費の2~3年分を現金として保有し、暴落時には現金から取り崩す 方法があります。


③ 債券やオルタナティブ資産を活用する

S&P500だけではなく、債券や金(ゴールド)、REIT(不動産投資信託) など、暴落時に異なる値動きをする資産を組み入れることで、リスクを分散できます。

次の章では、暴落直前にFIREした場合、取り崩し率調整と現金クッションがあったらどうなったか?をシミュレーションし、FIREを成功させるための有効な対策を考えます。

FIREの取り崩しシミュレーションは以下の条件で実施しています。

FIREシミュレーション条件

  • スタートの資産は6,000万円
  • トリニティスタディの4%ルール:月20万円(年間240万円)で取り崩し開始
  • 2年目以降は日本のインフレ率を考慮した取り崩し額へ変更
  • 取り崩しの開始は、それぞれの暴落前の最高値で資産が6,000万円あったところから開始
  • 取り崩し資産はS&P500連動の投資信託へ100%で運用
  • 投資信託の経費率は0.1%で計算(eMAXIS Slimシリーズ想定)
  • 配当はすべて再投資とし、直近の配当率である1.10%で一律計算
  • ドルベースではなく、円ベースでの算出

取り崩しシミュレーションで最も厳しい結果であった「オイルショック」と次に厳しい結果の「ITバブル崩壊」を取り上げます。

2-1. オイルショック直前にFIREした場合の資産推移

オイルショックは、1973年に始まった石油価格の急騰が引き金となり、世界的に株価が大きく下落した出来事です。

オイルショック直前にFIREした資産推移は以下の通りです。

オイルショック暴落後のFIREシミュレーション

25年分(300ヶ月)の資産を準備したにもかかわらず、10年10ヶ月(130ヶ月)しか資産が持たないという結果です。S&P500で運用せずに現金で取り崩した場合は、13年5ヶ月(161ヶ月)で資産が取り崩せたという珍しいパターンでもあります。

2-2. ITバブル崩壊直前にFIREした場合の資産推移

インターネット関連株が過熱し、やがてそのバブルが崩壊。株価は大きく下落し、回復までに約7年を要しました。

ITバブル崩壊直前にFIREした資産推移は以下の通りです。

ドットコムバブル崩壊暴落後のFIREシミュレーション

取り崩しを開始して25年後に4,000万円以上の資産が残っているため、30年資産が持てばOKとした場合はFIRE成功と言えるレベルではあります。

まずは、オイルショック直前にFIREした場合の暴落対策として、取り崩し率の調整と現金クッションがどの程度有効だったのか?をシミュレーションしてみます。

シミュレーション条件は2章と同様とし、資産は25年分(6,000万円)、26年分(6,240万円)、27年分(6,480万円)、28年分(6,720万円)準備した4パターンで比較し、有効な暴落対策を検証します。

3-1. 取り崩し率を下げるとどうなる? 資産寿命の比較

取り崩し率を4%(25年分)、3.85%(26年分)、3.7%(27年分)、3.57%(28年分)とした場合のシミュレーション結果は以下の通りです。


取り崩し率比較 まとめ表

オイルショックFIRE_取り崩し率比較まとめ表

単純に資金を増やしているので資産枯渇までの期間は伸びるのですが、3年分(36か月分)の追加資産を準備しても+14か月しか効果がないという厳しい結果になっています。

また、それぞれの取り崩し率での資産推移は以下のような形になります。


取り崩し率比較 資産推移

オイルショックFIRE_取り崩し率比較

株価の暴落に加えて5%を超えるような非常に高いインフレ率が続いたこともあり、取り崩し率を下げてもFIREは成功しないことがわかります。

3-2. 現金クッションを活用した場合のシミュレーション

次に現金クッションを活用した場合のシミュレーションですが、株価暴落時に現金を効率的に使えるのはいつか?を検証するため、株価が最高値から-10%以上、-20%以上、-30%以上、-40%以上となった月に現金を取り崩す4パターンを検証しています。

26年分(6,240万円)、27年分(6,480万円)、28年分(6,720万円)の取り崩し結果は以下の通りです。


現金クッション対策 まとめ表

オイルショックFIRE_取り崩し対策比較まとめ表

すべてのパターンにおいて、株価が-40%以上になった時に取り崩すのが一番良かったという結果になります。

また、それぞれの取り崩し率での資産推移は以下のような形になります。


26年分資産でFIRE

オイルショックFIRE_26年分取り崩し対策比較

27年分資産でFIRE

オイルショックFIRE_27年分取り崩し対策比較

28年分資産でFIRE

オイルショックFIRE_28年分取り崩し対策比較

3-3. オイルショック時の最適な取り崩し戦略の比較

オイルショック直前のFIREでは、

ココがポイント

  • 取り崩し率を下げるよりも現金クッションのほうが資産寿命を延ばすことができる
  • 現金を取り崩すタイミングは、最高値から-40%以上となったタイミングで取り崩すのが一番良い

というシミュレーション結果です。

また、準備する資産は多いほうが資産寿命が延びるのは当たり前ですが、-40%で現金取り崩すことを前提とした場合、資産の効率としては26年分(+7ヶ月/年)<27年分(7.5ヶ月/年)<28年分(8.7ヶ月/年)となっています。

3年分の現金クッションを準備して株価が-40%となった時に現金を取り崩すというのが最大効率ですが、それでも156ヶ月(13年)しか資産が持ちません。株価暴落とインフレが同時進行した場合、収入がないと破綻してしまいますね。

次にITバブル崩壊直前にFIREした場合の暴落対策として、取り崩し率の調整と現金クッションがどの程度有効だったのか?をシミュレーションしてみます。

4-1. 取り崩し率を下げるとどうなる? 資産寿命の比較

取り崩し率を4%(25年分)、3.85%(26年分)、3.7%(27年分)、3.57%(28年分)とした場合のシミュレーション結果は以下の通りです。


取り崩し率比較 まとめ表

ドットコムバブル崩壊FIRE_取り崩し率比較まとめ表

4%で取り崩した場合でも25年後に4,000万円の資産が残っているため、FIRE期間を30年と想定しているのであれば十分成功となっています。

1年分の追加資産ですと元の資産から減っていますが、2年分以上追加できれば、ITバブル崩壊、リーマンショックという大きな暴落をうけても25年後に元の資産よりも増加するというシミュレーションとなります。

また、それぞれの取り崩し率での資産推移は以下のような形になります。


取り崩し率比較 資産推移

ドットコムバブル崩壊FIRE_取り崩し率比較

暴落しているタイミングではあまり差がありませんが、株価が回復してくところで大きく差が開いているのがわかります。やはり、投資は元本の大きさが非常に重要になってきます。

4-2. 現金クッションを活用した場合のシミュレーション

オイルショック時のシミュレーション同様、現金クッションを活用したシミュレーションは、株価が最高値から-10%以上、-20%以上、-30%以上、-40%以上となった月に現金を取り崩す4パターンを検証しています。

26年分(6,240万円)、27年分(6,480万円)、28年分(6,720万円)の取り崩し結果は以下の通りです。


現金クッション対策 まとめ表

ドットコムバブル崩壊FIRE_取り崩し対策比較まとめ表

オイルショック時のシミュレーションと同じような傾向で、基本的には-40%で現金を使うのが良い結果になります。

ただし、26年分の資産であれば-20%と-30%での対策にあまり差がないのに対して、27年分・28年分の資産ですと-30%と-40%での対策にあまり差がない(一部逆転)という結果になりました。

また、それぞれの取り崩し率での資産推移は以下のような形になります。


26年分資産でFIRE

ドットコムバブル崩壊FIRE_26年分取り崩し対策比較

27年分資産でFIRE

ドットコムバブル崩壊FIRE_27年分取り崩し対策比較

28年分資産でFIRE

ドットコムバブル崩壊FIRE_28年分取り崩し対策比較

4-3. ITバブル崩壊時の最適な取り崩し戦略の比較

ITバブル崩壊直前のFIREでもオイルショック時同様、

ココがポイント

  • 取り崩し率を下げるよりも現金クッションのほうが資産寿命を延ばすことができる
  • 現金を取り崩すタイミングは、最高値から-40%以上となったタイミングで取り崩すのが基本は一番良い

という結果です。

ただし、資産の準備状況と効率、メンタル面などバランスを考えると、26年分の資産であれば-20%対策、27年分・28年分であれば-30%対策が良いのではないかと思います。

4%で取り崩した場合でも25年後に4,000万円の資産が残っているため、FIRE期間を30年と想定しているのであれば十分成功です!

今回のシミュレーションでは、1970年以降に最悪のタイミングでFIREしたNo1(オイルショック直前)とNo2(ITバブル崩壊直前)の場合、以下のようなことがわかります

暴落シミュレーションまとめ

  • ● 取り崩し率を下げるのではなく、現金クッションを活用したほうが資産効率は高い
  • ● 現金クッションは、最高値から-40%以上株価が下がった時に活用するのが資産効率が高い
  • ● 株価暴落と高インフレ(5%~20%)が同時に起きると対策しても効果は薄く、資産が確実に枯渇する

これらを踏まえて、FIREのための資産をどれだけ準備して、取り崩し率や現金クッションはどうするか?ですが、考え方として以下のような感じになると思います。

①バランス型

生活費1年分の現金クッションを準備して、株価が-10%以下になった時に現金クッションを活用する
・・・必要資産、株価下落時のメンタル面、下落が浅かった場合の取り逃がしなど、バランスを考慮した形

②暴落前提型

生活費3年分の現金クッションを準備して、株価が-30%以下になった時に現金クッションを活用する
・・・暴落を前提として、株価上昇を逃してでも暴落から資産を守り、超長期で資産が増えることを期待する形

③最速FIRE型

現金クッションを準備せず4%ルールでFIREする
・・・ITバブル崩壊直前でも30年は資産が枯渇しないと思われるため、余分な資産を作らず最速でFIREする形

ただし、株価暴落と高インフレ(5%~20%)が同時進行してしまうと暴落前提型であっても資産が枯渇するため、その場合は働いて収入を得るしかありません!

直近では日本のインフレ率が3%を超えていますが、日銀は利上げが遅れ、選挙では積極財政を訴える政党が支持を集めている状況となっているため、さらにインフレが加速しそうです・・・。

オイルショックやITバブル崩壊以外の暴落時にFIREしたらどうなったのか?気になる方はこちらの記事もご覧ください。

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